経営者が「在庫をしぼれ」と言ったら その2

1.卸の請求が月締めである


以前にも少し書いたが、卸から買った医薬品の代金は「月締め」と言って、月ごとにまとめて請求される。

 

つまり、6月1日にアムロジピンを1箱買おうが、6月30日に1箱買おうが、代金を請求される日は同じということだ。しかし7月1日に買うと、請求日が1ヶ月先になる。

 

会計が別になったって、結局アムロジピンは必要なんだから、6月に買おうが7月に買おうが同じことじゃないか。

 

それが会社にしてみれば大違いなのである。

 

 

 

2.資本とは

 

ちょっと例え話をしたい。

あなたはいま、手持ちが2000円しかない。貯金もへそくりも0円。

それで、お風呂場のシャンプーボトルはほぼ満タン。

 

この状態で、一袋500円のシャンプー詰替えを今日買うだろうか?

 

大抵の人は買い控えをすると思う。そしてこの状態で、家族がその2000円を使ってシャンプー買ってきたら…。怒るのが普通だと思う。あなたは家族に注意するかもしれない。「大して安売りもしてないのに、そんな買い物して!急な出費があったらどうするの!シャンプーまだこんなに残ってるじゃない!次の給料日まで買い控えしようとは思わなかったの!?」

 

このことが、会社の資金繰りにまったく当てはまるのである。会社は一般家庭とは違い、手持ちは少ない貯金はほぼない、出費は多い。火の車だ!(と理解するとしっくりくる)。

 

この2000円しか入っていない寂しい財布が、会社の「資本」である。

次の給料日、つまり次の収益が振り込まれる日まで、上手に買い物をしないといけない。

 

 

 

3.資金繰り、キャッシュフロー

 

さて、また新たに例え話をする。

 

では、2000円しか入っていない寂しい資本で、6月1日、卸からアムロジピンを300錠購入してみる。

そのうちに処方せんが何枚か来て、3ヶ月で300錠ちょうどはけた。

最終的に、9月20日には売上(診療報酬と患者さんの自己負担の合計)がすべてもどってきた。合計2800円だった。

これで資本は3000円になった。

 

利益が1000円出たぞ!財布も増えた。めでたしめでたし。

 

いち社員ならこれでいいのだろうが、経営者は他に考えなくてはいけないことがある。

今回の場合は、

・資本が200円というギリギリの状況で1ヶ月以上も過ごしてしまった。危なかったなあ。

・あと500円資本があれば、OTCを薬局に陳列してもっと儲けを出せたかも知れないのに!

ということである。これが「資金繰り」とか「キャッシュフロー」の概念である。

例えは変わってしまったが、前回のシャンプーの話と通ずるところがあると思う。

 

 

購入価は1800円だった。

6月はアムロジピンが100錠出た。

7月10日、売上と調剤報酬が本社の資本に戻ってきた。

7月31日、卸から1800円請求されて、払った。資本は残り200円になってしまった。

7月はアムロジピンが100錠出た。

8月はアムロジピンが100錠出た。

さっきの例え話だと、

アムロジピンを300錠まとめて

6月1日にアムロジピンを300錠購入してみる。

7月1日、翌月に1800円請求されて払った。資本は200円になってしまった。

そのうちに処方せんが何枚か来て、3ヶ月で300錠ちょうどはけた。

9月15日には売上(診療報酬と患者さんの自己負担の合計)がすべてもどってきた。2800円だった。

資本は3000円になった。

 

 

 

4.月末在庫金額

さて前回の、経営者の悩み

・資本が200円というギリギリの状況で1ヶ月以上も過ごしてしまった。危なかったなあ。

・あと500円資本があれば、OTCを薬局に陳列してもっと儲けを出せたかも知れないのに!

 

は、どうやったら解決できるのか。

 

これは、前回の例だと、購入したアムロジピンを、その月のうちに使い切ると解決する。

そうすると、来月の会社のお財布を一番うるおった状態にできる。

 

じゃあ、

これを現実の薬局在庫に当てはめて、月末の在庫をすべて0にする。これで万事解決。

 

…ではなく、こんなことは現実には無理だ。

月末だろうがひととおりの医薬品を備蓄しておくのが薬局の努めだし、

そうじゃなくても錠剤はたいてい100錠包装で購入するんだから、端数が出る。

 

なので!折衷案として、

「月末在庫金額をできるだけ小さくする」。となるのである。

現場では下のような指示がよく出ていると思う。

・医薬品は極力月末までに使い切るようにしなさい。

・月末までにはけない分は発注しないようにしなさい。

・できるだけ来月以降に買うようにしなさい。

 

 

これはすべて「月末在庫金額をできるだけ小さくする」ためである。

 

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オサ
著者:オーサーと申します。  大学病院の薬剤師、薬学部の職員を経て、今は北海道の薬局で管理者をしています。今度第二子が産まれます。  分かりやすい文章を第一に考え、ここでは小説のような、極力平易な文章で書くことにしました。  また文中では、我々が在庫管理を使用する場所のことを「現場」と書きます。基本的には「現場」=「採用品目数1000品目以下の調剤薬局」のことを想定して書いていますが、「病棟」「病院の薬剤科」などに置き換えてもある程度読めるよう、配慮して書きます。

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