私たち医療従事者は、もっと在庫管理の重要性を認識しなければいけないと思う。
ここで言う在庫管理とは、薬局や病院などで、医薬品をどれくらい買うか、買った医薬品をどのように品質管理していくのか、のことだ。
私が病院、そして薬局に新人薬剤師として就職したとき、とにかく在庫管理を覚えるのが大変だった。欠品を出しては周囲のスタッフから怒られてばかりだった。
在庫管理は薬学部のカリキュラムにも無かった。物流の本を読んで勉強しても、それがそのまま医療現場に応用できるわけもない。上司にやり方を聞いても「在庫はセンスだから」「出来て当然」との返答で、満足な答えは返ってこない。実習中の学生さんに在庫管理を体験して貰っても、食いつきは悪かった。
しかし当然、そんな甘い考えで在庫管理をしてよいはずがない。「硝酸薬を患者さんにお渡ししたが、使用期限が切れていた」「エピネフリン注が必要になったが、在庫を切らしていた」万が一こんなことがあれば、患者さんの命に関わりかねない。
そして在庫管理は薬局や病院の経営に影響を与える。医薬品の買い過ぎは経営を圧迫する。経営の悪化は医療サービスに悪影響を及ぼし、私たちの給料だって減る。
在庫管理は立派な「業務」だ。治療と経営を同時にマネジメントするという、医療従事者にとって最も重要な業務のひとつなのだ。自衛隊の薬剤師は医療物資を戦地の最前線に届けるため、パラシュート降下の訓練をしている。
私はその後、周囲にご迷惑をおかけしながらも、在庫管理のノウハウをある程度学ぶことができた。
在庫管理は重要な業務だが、頭をかかえることは無い。在庫管理にはノウハウがあり、方法論がある。必要なことだけを何となく知ってさえいれば、最低限の日常業務はこなせる。
とにかく、在庫管理のノウハウを体系化することが必要だ。そして、皆でノウハウを共有できたなら、すべての現場で在庫管理が上手く行き、薬に関わる人全員が幸せになる。
皆で幸せになったら良い。それが私の願いだ。